テント村住民N君たちの弁明書を転載
今日は仕事が終った後で奈良に行き、奈良在住ドラマーとリハーサルしてきた。明日は、偽ジプシーのバイオリン奏者と練習。1月下旬に自分の両バンド、ジェロニモレーベルとファルソス・ヒターノス(偽ジプシー)で、関西でたて続きにライブするので張り切っていきます。2月には、友達が紹介してくれたジャズBar(!)で2/10に偽ジプシーが2時間ライブ。そして2/15~18は両バンドで欲張り気味の東京ツアーと、けっこう充実してるが、3月以降は何もライブが決まってないや。そろそろ営業活動せなあかんな…。誰か呼んでくれる人いたら、声かけてくださいよーぅ!
さて、今日の本題はこれから。大阪市でひどい事が起こっている。何度か、このブログでも取り上げた、長居公園の野宿者の強制追い出しが目の前に迫っている。俺の知ってるN君も含む、4人のテント村住民が大阪市に弁明書を提出した。弁明書というのは、「はいはい、あんたらの意見も聞きましたよ」的な、行政の手続き上の文書だと思われ、役所の担当者に通じるかどうかは、はなはだ疑問だが、ちょっとでも多くの人に問題を知って欲しいとの思いからN君たちは大阪市に提出し、公開してるそうです。
四者四様に、誇り高い文章です。俺は、読んでて心が震えました。N君の同意を得た上で転載します。長いですが、ぜひ読んでみてください。以下、転載です。
■N君の弁明書
これまでぼくらの代替地要求を無視し、話し合いを封じ、ぼくらの活動を黙殺してきた大阪市に対しては、なにしろぼくらの話を聞いてほしいとだけ言いたい。
(以下)
大阪市長 關淳一 殿
このたび、大阪市が私たちの暮らすテント・小屋がけに対して撤去を求めていますが、今の状況の下ではテントの撤去も私たちの立ち退きも選ぶことができません。
強制排除により、何人かの仲間は行き場(生き場)を失い路頭に迷うことになります。引っ越し先を探しておりますが、大阪市としてテント・小屋の新規設置を厳しく規制していることもあり、はなはだ困難です。真冬のこの時期の強制排除は路上死に直結しかねない、著しい人権侵害です。
大阪市としては、シェルターや自立支援センター、高齢野宿者には生活保護をということで「対策メニュー」を用意していると主張しています。しかし、そのいずれも選択することのできない仲間がいる現実は「対策メニュー」の不十分さを物語っています。また、「対策を受け入れるか、さもなくば強制排除」「野宿者の生活・人権よりも管理の適正化」という大阪市に対する抗議の意思表示としてとどまっている仲間もいます。「自立支援」の押しつけのもと、「対策に乗らないものは行政は面倒をみない」というのは私たちにとっては「死んでもかまわない」と宣告されていることと同じです。世間から見ても、「わがままな野宿者だから仕方がない」という見方が広がることを懸念します。野宿者の死を容認するような社会はとても危険な社会だと思います。
私たちは、現住する場所に固執して強制排除に反対するわけではありません。他に生きていける場所=代替地の提示を求めているのです。公園工事にはこれまでも公園事務所と話し合いの上で、可能な限り協力してきたという経緯もあります。
しかしながら、この半年、公園事務所と私たちの間では「話し合い」は存在しませんでした。「工事に協力してほしい」というのみで、替わりに生きていける場所を求めると「代替地は認めない」「一切妥協しない」と木で鼻をくくったような答えが返ってくるだけでした。
10人ほどの仲間が「説得に応じて自主退去した」と報道されていますが、これも事実と違う部分があると思います。それぞれの当事者が納得して移動したのは間違いないと思いますが、実際は「強制排除という圧力のもとで、否応なく立ち退いた」というのが真相だと思います。いまは、みんなの幸福を願うのみです。
いま、労働者の雇用と生活が不安定・低収入に追いやられワーキングプアとも呼ばれる労働者層が拡大しています。とりわけ若い労働者の「日雇い派遣」「ワンコールワーカー」は現代の日雇い労働者と呼べる存在であり、深夜営業のインターネットカフェや漫画喫茶で「居住」する若者は「ホームレス状態」であると言えます。野宿者と貧困労働者の垣根はますます低くなっています。労働者切捨ての帰結として野宿・野垂れ死にがあり、強制排除という行政による労働者保護の責任放棄、死刑宣告にも等しい行為は、労働者棄民化の象徴的な事件であると言えます。野宿者の強制排除は全労働者に対する弾圧であると考えます。
最後に、大阪市というよりも公園事務所職員のみなさま一人ひとりに申し上げたいことは、昨年の強制排除当日の現場で私たちがもっとも悔しい思いをしたのは、相対する市職員やガードマンたち(解体したテントや荷物を運搬車両に積み込んだのは、日雇い派遣で集められたフリーターだった)は、本来であればともに闘うべき仲間であるのに、ということです。労働者同士が殺し合いをさせられるという状況に対し、みなさまとともに何かを為していきたいと思っています。
以上
■Kさんの弁明書 /2007年1月10日
大阪市長 關淳一 殿
儂はここ長居に暮らして10年になります。多くの役人と話をつけ、多くの揉め事もまとめてきました。今まではそれをしてきた、できてきた。それが、今度はできないというのはどういった道理でしょう。
過去に遡りオリンピック誘致、ワールドカップ前夜と、長居公園のホームレスが暮らすテントが撤去される段には、必ず説明会がなされてきました。その都度、話し合いでもって互いに譲歩し頼まれごとは引き受けてきたものです。なぜ今回は説明会すら開かず、力ずくの強制撤去を選ぶのか。それも、「できたら穏便に自主撤去して欲しい」と、言った舌の根も乾かないうちに。
あなたがた役人に認知されかつ多くの局面で協力してきたホームレスを放り出すのであれば、どういう理由で出て行ってほしいのかということをきちんと立証して戴きたい。あなたがたの「説明」した気になっている理由の根拠である住民の苦情とは、漠然と語られるのみで、どういう苦情が過去どうあがっているのか統計や推移など、データとして持ってきたことはない。ましてや工事、工事というが、どこをどう着工するか図面を見せて具体的に示したことは一度としてないではありませんか。これをホームレスへの愚弄と言わずになんと言いましょう。また、あなたがたは、我々のテントについて都市公園法を持ち出して不法占拠と言いたがるが、それを持ち出すのであれば我が国の批准するところの国際人権規約の居住権についてももっと学んでほしい。あなたがたが認めたがらなくとも、儂には居住権ゆうもんが存在するのです。無理やり強制撤去するのであれば、針の穴ぐらいの小さな穴でもあけておくのが筋というものです。自立支援センターやシェルター、生活保護だけが、ホームレスの逃げ道になると、今でもお思いか。
「市のホームレス担当者で、Kの名前を知らない者はいない」。これは、役人自身が言っていたことです。役人は、わしがここでしか生きられん、ということを知っている。それを知っておりながら、個人的に心配していますと言いこそすれ納得のいく説明をする者は誰もおらず現南部公園事務所副所長も逃げておるのが現状です。
行政代執行の段取りも整い、今さら遠慮はいらぬという腹づもりなのでしょうか。
まだ令書は出ておらぬのだから、今なら話し合いの余地はあるというものです。力で潰しにくるのなら、儂なりの力で対抗すると致します。
以上
■Fさんの弁明書 /2007年1月10日
大阪市長 關淳一 殿
私は、去年1月30日に、うつぼ公園・大阪城公園で行政代執行にあった当事者です。今回また長居公園も行政代執行を、しようとしています。うつぼ・大阪城公園と同じで、満足な代替地も与えず、シェルターや自立支援センターなどへの強要と押しつけだけで、充分な話し合いせず、私や仲間達そして支援者の人達の話を聞きませんでした。公園事務所の人達や行政側の人達は、私達、ホームレスの人達を、人間として認めないで、強制排除、行政代執行という名の権力の暴力をまたおこなおうとしています。
私達ホームレスは、一時避難している場所が、公園であったり、路上、河川敷の場所です。たとえホームレスでも、生きているからには生活する場所、人間として生きる、小屋がけ、テント必要です。以前、大阪城公園で生活していたときに、テント小屋がけをしていない人が、公園事務所の人達に、シェルターに入れてくれるように頼んだところ、大阪城公園でテント・小屋がけしている人しか入れない、こういうような話を何人かの人達から聞きました。テント・小屋がけしないで、夜になると大阪城公園に来てダンボールハウスを作って寝る人達に対して、何の対策もせず、私達テント・小屋がけしている人達には、シェルターに入れと強要し押しつける。行政は、同じホームレスでもこうした偏見と差別をしている。目に見えてテント・小屋がけが減ればそれでホームレスの問題がなくなるわけではありません。
こういうことからでもわかるように、収容と排除が目的だけの行政側の人達に対し、私達は一致団結し、非暴力で戦っていきます。たとえ長居公園から行政代執行で強制排除されても、私はどこかの公園に移動し生活していきます。私は、生命ある限り、これからも強制排除・行政代執行、行政の不当な行いに対して、強く抗議行動をしていきます。
弱者いじめや税金のムダづかいをやめ、失業対策にもっと力を入れてくれることを私達は要望します。今からでもおそくない。長居公園世界陸上大阪大会のための工事名目の不当な追い出しをやめてください。行政側の人達は、もっと話し合いをしようではないか。本当にこれでよいのか。頭を冷やして考え直せ。行政側の人達よ。
■Sさんの弁明書 /2007年1月10日
大阪市長 關淳一 殿
S 〒546-0034大阪市東住吉区長居公園テント村
弁明書
私,Sは,この3年間長居公園で生活してきました。今回,大阪市が整備工事を名目として私たちの住居を強制撤去しようとしていることには到底納得がいかないので,いくつか弁明申し上げます。
大阪市の言い分は,以下のようにまとめることができます。
(1) 私たちのテント村周辺が夜間暗いなどの問題があるので,街灯設置などの整備工事が必要である。整備工事のために,私たちのテントを撤去する必要がある。
(2) 大阪市は,代替住居として自立支援センターなどへの入所を勧めてきたから,強制撤去後に私たちが路頭に迷うことになるとしても,それは一切私たちの責任であり,大阪市の側に非はない。
(3) そもそも,私たちのテントは都市公園法上の不法占有に該当するから,強制撤去が可能である。
以上の各点について,私なりの考えを述べていきます。
まず(1)についてですが,なぜ,あの一帯だけ街灯設置工事が必要なのか,理解に苦しみます。テント村周辺が長居公園内で特に暗いということは全くありません。現に,テント村前のジョギング・コースは,夜間でも通行する人がたくさんいます。長居公園内の他の場所にこそ,もっと暗くて夜間誰も通らないような道路がいくつもあります。街灯設置工事には,何か別の意図が隠されているように思えてなりません。
私たちは整備工事自体に協力する意志はあります。だからこそ,今回の工事の話がなされたときにも,テントを建設できる代替地を求めてきました。後で述べるように,私たちの生活は今のテント村なしには成り立たないからです。なぜ公園事務所は,テント村を長居公園内の他の場所に移転させることを認めてくれないのでしょうか。
スタジアム周辺で露宿を余儀なくされている人たちも退去が強要されていることも考えると,大阪市は長居公園から野宿者を一掃しようと急いでいるとしか思えません。なぜそんなに急いで野宿者を排除しようとするのですか。国際的イベントが開催される長居公園に野宿者が生活していることが,大阪市としてそんなに恥ずかしいですか。後述するように雑多な人間が集う私たちのテント村が,そんなに見苦しいですか。
大阪市内外の他の公園でなされた排除では,「野宿者がいると,市民や子供たちが恐がるので公園を利用したくても利用できない。」という「世論」が根拠とされることがよくあります。しかし,この「世論」は事実無根だと思います。私たちは,市民や子供たちから襲撃やイタズラをされたことはあるものの,かれらを恐がらせたことはありません。小学生くらいの無邪気な子供たちにテントを蹴られたり砂をかけられたりしたときには,「誰が子供たちをこんな風に育てているのだろう」と思い,大変悲しい思いをしました。それでも私たちは,長居公園周辺の地域の人たちとの関係を大切にしたくて,これまでここで生活してきました。
次に(2)についてですが,マスコミ報道などでは,私たちは「代替住居として自立支援センター入所を勧めてきたのに応じていない」などと,いかにも我儘で,好き好んで野宿生活を続けているかのように書き立てられています。しかし,これは全くの誤りです。
私は3年前まで調理師として働いていましたが,失業が原因で野宿生活を始めました。万策尽き果てて,飯を食うために止むを得ず,生まれて始めてゴミ箱に手を入れようとしたとき,私がどれほど躊躇したか,あなた方に分かりますか。生きるために必死だったからこそ,それができたのです。決して好き好んでできることではありません。それでも何とか,廃品回収の仕事をしながら食いつないできました。
長居公園内に定住して生活していれば,地域住民の人たちとも関係ができてきます。野宿問題に関心がある人たちも訪れてくるようになりました。そのうち,各方面に人間関係ができて,アルバイトもできるようになりました。
今,私は自立しています。自力で稼いでいます。アパートを借りて家賃を払えるほど稼いではいないけれども,公園の片隅で野宿しながらであれば,何とか生活できています。野宿生活を始めてから,いろいろと苦労して試行錯誤しつつ,地域の人たちと関わりあいながら,今の生活を築いてきました。どこかの銀行や空港会社や娯楽施設などとは違い,行政の手助けは一切なしで生活してきました。今の行政に雇用を創出する能力がないことくらい,誰の目にも明らかですしね。
ところが今,大阪市は「自立支援センターに入所させて『自立』させてあげようとしているのに公園に居残ろうとしているのは,全くけしからん」とほのめかしています。自立支援センターが自立支援施策として有効かどうかという問題もありますが,それとは別に言いたいことがあります。もし私たちが自立支援センターに入所してしまえば,施設自体の閉鎖性のために,地域の人たちと知り合うこともできなくなるし,規則が厳しすぎるせいで,いろいろな人たちと酒や茶を酌み交わしながら語り合うこともできなくなります。もしかしたら,今までテント村で得られていたような仕事が得られなくなり,逆に今までの自立生活が不可能になるかも知れないのです。
私は私なりの方法で必死に自立してきました。それなのに,大阪市は「あなたの自立してきた方法は間違いだ。公園を出て自立支援センターに入りなさい。」とでも言いたげな態度を貫いています。バカにされているような気がします。大阪市が命じるままに自立支援センターに入所して「自立」に向けて努力させられることは,私から見れば,これまでの私自身の自助努力の歴史を否定することに他ならないのです。私の生き様を,私自身が否定しなければならない。人間として,これほどまでに悲しいことがありますか。
ろくに市民のために仕事をするわけでもなく税金を食い潰しているオエライ役人さんたちに,こう言いたいです。自立していないのは,あなた方だ。あなた方に本当の自立とは何かを考えて頂きたい。会社や役所などで,私たちの社会に必要かどうか怪しいような仕事をして給料をもらうのが自立ですか。私たちのように,廃物を拾い歩いて有効利用することが,なぜ自立と言えないのですか。この大量消費社会において,このような私たちの生業は決して非難に値するものではないはずです。また,私たちは毎週末,某所に借りている畑で農作業に従事し,収穫物を自分たちで食べたり,周辺住民の人たちに廉価で販売したりしてきました。行政的には認知しようがないかも知れませんが,これもまた私たちの自立生活の一面です。
そもそも,“働く”とはどういう意味ですか。企業や行政から給料をもらうことですか。金を稼ぐことですか。働くとはどういういうことなのか,そのコンセンサスが社会的にない限り,自立支援なるものを私たちに強要することは許されないはずです。私は,これまで私が築いてきた地域とのつながりを大切にして,これからも長居公園で自分なりに自立し続けていきたいと考えています。
(3)についてですが,法律上は不法占有という口実ですが,要するにあなた方が言いたいのは「野宿者の私生活のために公共空間を占有するのはけしからん」ということだと解釈できます。しかし私たちは私たちなりの考えで,テント村の公共性というものを常に追求し続けてきました。公共空間を占有しているという負い目を日常的に感じているのは,他ならぬ私たち自身であるからです。
私たちがテント村で定住しているからこそ,地域の人たちが,毛布衣類や食糧など,いろいろなカンパ物資を持って私たちを訪れて来ます。テントがあるからこそ,それらカンパ物資を長期間保管することができます。私たちは,公園で野宿することができずに路上などで不安定な野宿生活を強いられている人たちとも,それらカンパ物資を分け合っています。
野宿者だけではありません。現在,いわゆるワーキング・プアと呼ばれる潜在的野宿者が大勢いますが,失業した非野宿者が「これからどう生きていけばいいか」と,私たちのテント村に相談に来ることもあります。行政機関が全うすることのできていない公共的な機能を,私たちのテント村が果たしているのです。
さらに別の役割も果たしています。公園事務所の方々は,長居公園大輪祭り(昨年9月17-18日)や,もちつき大会(同12月31日)に,老いも若きもたくさんの人たちが集い楽しんでいたのを見ていたはずです。あるいは,非野宿者の友人たちや地域の人たちがちょくちょく遊びに来て談笑している光景を,幾度となく見ているはずです。
これはテント村が公園という開放的な空間にあるからこそ可能なのです。異なる世代どうしが分断され人間関係の希薄化が進むこの現代社会において,私たちのテント村のような空間は貴重なのではないでしょうか。非野宿者でありながらもテント村の常連である友人たちはこう言います。「テント村がなくなれば,私も貴重な居場所を失うことになる」と。テント村の存続は,この社会に息苦しさを感じている非野宿者たちの希望でもあります。
以上の理由から,私は本件撤去勧告に応じることは出来ません。
最後に,一言付け加えます。私はこれまで,いろいろと苦しみ,悩んだり工夫したりしながら公園で野宿生活を続けてきました。それを「不法占有」の一言で片付けられ,いとも簡単に「自立支援」を押し付けられていることを,大変悔しく思います。
誰しも,今ここでこのようにして生きているのには,それなりの理由や歴史があるはずです。私たち野宿者がこれまでどのように生きてきたのか,思いをめぐらせて頂きたい。それを尊重して初めて,本当の意味での自立支援が可能になるのではないですか。
關淳一さん,質問があります。あなたは自立していますか。働いていますか。公共のものを私物化して人に迷惑かけていませんか。
以上
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以上、長居公園の4人の方の文章を転載させていただきました。
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