中国ノイズ、エルサレムカフェ、公園野宿、ライブ三昧

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。動き回ってる間はブログが止まってしまう俺ですが、今年もよろしくお願いします。先月の中ほどから、いろんなモノを見に行ったり、新しい人に出会ったり、そしてライブもたくさんやった。週の半分近く大阪に通ったりして、かなり金欠になったが充実した日々でもあった。いっぱつ、振り返っておこうっと。

■12/16 中国ノイズとエルサレムカフェ
 super sonic china(中国のアングラ音楽を紹介するイベント集団)の友だちに誘われ、新世界のココルームにノイズ楽団D!O!D!O!D! のギタリスト・李剣鴻(リージェンホン)を観に行く。普段、ノイズ音楽には縁がないが、彼のギター独演は時にファンキーで、リズムのキレが鋭かった。俺と同じテレキャスターを弾いてたので話しかけると、「飛行機でギター運ぶのが麻煩(マーファン=めんどい)なんで、日本に来て買った」と言って人懐っこく笑っていた。ジェロニモレーベルのライブ盤とCD交換した。

 そのままアメリカ村に移動して、フランス留学(?)に行くF君の送別パーティへ。F君は、ある時は移動カフェ「エルサレム・カフェ」の名シェフ(旅先で仕込んだ彼のアラブ料理は激うま!)であり、またある時はエロ狂言師という顔を持つ。偽ジプシーでも何度か共演したことのあるエロ狂言は、賛否両論・好き嫌いがハッキリ分かれるが、その、あまりにも真剣なくだらなさの一方で、伝統芸能へのリスペクトらしき心意気も伝わってきて、俺は好きである。(と言うても、ほんまの狂言を俺は知らんのだが…)

■12/17 原爆のドキュメンタリー
 翌日もココルームへ。友だちが、原爆を題材にした映画の上映会を企画したので観に行った。実は俺の実家は広島にあり、中学高校時代だけ俺も広島に住んでいた。広島は川の多い街でよくハゼとか釣りに行ったのだが、河原の泥の中から今でも当時のボタンが出てきて、それを拾い集めているおばあさんの話とか印象に残った。アメリカが、被爆者を執拗に「観察・研究」する一方で決して「治療」しなかった事も衝撃的だった。当たり前の事だが、広島にいても何も知らんかったのだなあと思った。

■12/21 関西公園~Public Blue
 Hexという友だちがいる。新世界に住む大阪弁ペラペラのアメリカ人で、ジェロニモレーベルのライブCDの中で、時々奇声を発してる兄ちゃんだ。彼を含めドイツ・アメリカ・日本のスタッフが「関西公園~Public Blue~」というドキュメンタリーを作ったというので、その試写会に行った。
 外国人から見た日本社会の分析など「ん?」と思う所もあったが、そんな細かい事はどうでもいい。野宿者を「人目につく所からひたすら排除する」という大阪市が進める異常事態を真正面からとらえた迫力あるドキュメンタリーだ。終盤で流れる、去年の(うつぼ公園での)テント強制排除の現場映像は、特にナマナマしい。
 手をつないだガードマンや「排除班」の腕章をつけた市職員が、じわりじわりと包囲網を縮めながらテント村に迫って来る様子はもちろん不気味なのだが、一方で悲しい滑稽さがある。命令されて仕方なくやっている人も、事情を知らずに連れてこられたバイトもいるに違いない。俺には一種の戦争に見えた。情報が遮断された中での異常事態という点でも、人の「生き死に」に関わるという点でも…。何も、よその国で爆弾が炸裂するのだけが戦争じゃないと思った。
 去年の秋は、ホームレス関係の野外イヴェントで演奏させてもらう事が多かったが、大輪祭りの会場となった南大阪の長居公園テント村にも、追い出し期限が迫っている。
 
■12/23 チョチェック&テックス・メックス
 十三テハンノで偽ジプシーの2006年最後のライブだった。テハンノには、この一年かなり世話になった。半年間、バイオリンのショコーニャ・ヨコヤマーノフと二人で動いてきたが、彼女のバイオリンは時おり俺の存在を脅かすほど、ふてぶてしい瞬間がある。アドリブのキレと、演奏の厚みがグッと出てきたと思う。最近は歌ってて、すごい楽だ。
 この日は、テキサス~メキシコのごきげんな音楽をひたすら演奏するコンフントJ(10/13日の記事「サボテン兄弟」参照)と一緒だった。アコーディオン奏者・オノリオさんが、あらかじめ洗脳用CDを送ってくれたので、俺も「監獄の階段」という曲を覚えて共演させてもらった。初めてテックスメックスを歌ったが、こりゃあ楽しいわ! 前からやってみたかったグリート(メキシコ歌謡風の叫び)も「なかなかいけてる」と誉めてもらった。ア~ッハッハッハァ~。もっと何曲も覚えねばなるまい!

■12/24 奈良ネバーランド
 ジェロニモレーベルで、奈良のネバーランドのクリスマス・ライブに出演。高校の野球部員のバンドが出たり、バベルの塔みたいな巨大ケーキが振舞われたりと、予測不可能なイヴェント。何度か共演している「鹿せんべい」が、見るたびに迫力あるロックンロールをやっているのも、刺激になった。最後に出た社会人バンドのヴォーカルの嫁という人に「プロですか?」と尋ねられたが、「いや、金は出ていく方が多いっス。別に仕事してます。」と正直に答えたら、CDを買ってくれた。感謝。

■12/27 サイゲンナイト@クラブウォーター
 巨体だが笑顔の優しいサイゲンさんが、濃厚なバンドを集めて二日間に渡って繰り広げる、半分オールナイトなイヴェント。その一晩目に、ぼん吉ドラムのジェロニモレーベルで出た。この日の出演陣は、ハチワレ天満宮、井上卓、奇天烈(元「軍鶏礼賛」よしひで朗のユニット)、Plastic Mode、ボケロウ・オンザ・ロックなどなど。久しぶりに見れたバンドも多く、嬉しかったが、お客をあんまり呼べなかったのがもったいない。年末のこの時期、オールナイトは厳しいのかな。

■12/30 年末俺合戦
 偽ジプシーや俺ソロで、ほぼ毎月演奏させてもらった感のある十三テハンノ。マスター・浅田純平をはじめ、ここに出入りする歌い手が2曲ずつ歌う“鍋つきライブ”に出てきた。若手の弾き語り系(と言っても、テハンノでは凡庸な歌手など見た事がない)が多い中、チョチェックにするかラケンロ~ルにするか、家を出る直前まで迷った。が、ここはいっぱつ、敢えてエレキ一本でラケンロ~ル・メドレーしてきた。そして、地下鉄の終電で長居公園へ。

■12/31 餅つき・ギター
 12時過ぎにテント村に着くと、友達のN君たちはちょうど夜回り(少年らの襲撃がないか、とか、広い公園に散らばってる野宿者の健康相談を兼ねて)の最中で不在だった。近くのコンビニで差し入れと自分用の酒を購入して戻ると、N君や知った顔が何人か帰ってきていた。大晦日のこの日、長居公園テント村では演芸大会を兼ねた餅つきが行われる。そしてこの日は、大阪市による追い出し期限でもある。
 東京から来た記者や支援の学生たちと、しばらく酒を飲んで身体が温まったところで、俺もブルーシート・テントに泊めてもらった。俺に割り当てられたのは、食堂用に立てられた広めのテントで、戸口が常時開いたままだったが、冬山用のシュラフを持ってきたので快眠できた。目がさめると人が増えた気配があったが、昼前まで惰眠をむさぼった。

 ようやくテントから這い出したら、表はえらい賑わいだった。しかし自分のテンションが追いつかず、交差点のミスタードーナツでコーヒー飲んだりポカポカ陽気の長居公園をうろついたりして、時間つぶし。テント村に戻ると、餅つき大会はかなりの盛り上がりで、すでに友だちの歌手・のえちゃんが歌った後だった。

 餅つきの動きに合わせてワウ・ギターを弾くという、即興の瞬間芸を繰り返してるうちに、何やらテンションも上がってきたので「見納めかもしれぬ」「友だち失くすど」「ゲバラの夢・サパタの夢」などの新曲を中心に5曲ほど歌わせてもらった。

 俺が歌い終わるやいなや、ホームレス詩人・橘安純さんがなだれ込むように朗読パフォーマンスを始め、日が沈むころには、テント村住民による芝居が始まった。公園の樹木や、テント村を包囲するフェンスを巧みに舞台背景に使い、ママチャリ暴走族が公園を走り回り、あっという間の2時間。
 最初はたいして期待もせず眺めてたのに、ぐんぐん引き込まれた。年越しソバをごちそうになって、京都に戻る。

■1/4 死亡遊戯byサカイアンズ@堺FUZZ
 堺の名物飲み屋「犬吉」に集い、自らをサカイアンズと名乗る愉快な人々がいる。ひょんな事から、知り合ったのが2年前。以来、偽ジプシーもジェロニモレーベルも、そして俺ソロ・ライブでもちょくちょくお世話になっている。
 音と遊びと酒をこよなく愛するサカイアンズの新年パーティーに、ジェロニモレーベルで呼んでもらった。ぼん吉のドラムで。俺は年末からのライブ続きで弦の張り替えをさぼってたので、最後の「陳腐」で久々に弦がプチッと切れましたが、それもまた楽し。景気のいい初ライブができた。ええ滑り出しである。

 今後のライブですが、ジェロニモレーベルが1/23・24、偽ジプシーが1/26・28と、関西では1月下旬にどどどっと続く。2月半ばには、東京ツアーもある。あと、気になる長居公園の強制追い出しが、1月中にやられる可能性が大きいらしい。

 厳しいことも楽しいこともあるだろう。世界はひどい事になっており希望はないが、生きてる事はかなり楽しい。今年もいくで。おうよ。

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